2022/02/25 20:59
ポケモンを買った。ポケモンアルセウスを買った。実に20年ぶりのポケモンである。
強風が窓を叩きつける、凍てつく寒い日に届いた。俺は裸足だった。平面であるはずのフローリングが鋭く切り裂くように土踏まずに噛みついたことをよく覚えている。
ポケモンアルセウスとは、要するに人殺し戦争ゲームのお子様入門版であり、aimしてkillする銃の所作をモンスターボールに置き換えたゲームである。
東の方では人殺しだの戦争だのがまったく冗談では無くなってきているが、実際いまのエンタメ市場において人殺し戦争ゲームことFPSが幅を利かせているのは避けようのない事実である。実際にデータを見てみよう。1995年から2022年にかけて俺はすごいすごい育ったし、後半の5年ですごい太った。あと朝寝起きに凄いえずく。助けてくれ。
人殺しゲームが児童に加害欲求を駆り立てるか否かを立証する科学的根拠は否定されつつもあるが、人殺しゲームが児童に悪影響をもたらしかねないという心理的不安は完全に拭い去られたわけではなかろう。
そんな折に発売されたポケモンアルセウスは全ての穴という穴をすり抜けた完璧なプロダクトだ。繰り返しになるが、aimしてkillする銃の所作をモンスターボールに置き換えた画期的なシステムだ。法の穴、規制の穴はもちろんのこと、でっかい三画定規みたいに目尻の吊り上がったザマスザマス教育ママ的な親御様の鋭い目をすり抜けた。すり抜けた先に待ち受けるのは俺。そしてアルセウスは俺の心の穴をもすり抜けた。埋めろや。
かの哲学者ニーチェはある朝、こう呟いたという。「おさようさん」
***
アルセウスがどうのこうの、なんとか団がどうで、主人公がどうの。
だるすぎる。問答無用。そんなことより俺はコダックの [狙撃] に夢中なのである。
本作は(これまでのシリーズがどうだったかは知らんけど)同じポケモンを複数捕まえることが推奨されており、複数捕まえても飽きずにプレイできる演出が施されている。
狙ってボールを投げる、捕獲
狙って投げる、捕獲
狙って投げ、捕獲
狙っ、捕獲
単純作業だがこれが抜群におもろい。抑鬱気味で部屋に引きこもっている自分にとって、ちょうど良い難易度の単純作業だ。絶えず洗浄作業を続ける食洗器の轟音に紛れて、ポケモンの脳をカチ割る小気味の良い音が部屋に響く。
あとコダックは凄い可愛い。凄い可愛いからたくさん欲しい。
手持ちのポケモンはもちろん、そこに溢れた奴らが収容される一時留置所みたいな場所が綺麗なレモン色に染まっていく様は痛快である。俺がマリメッコのCEOに就任したら赤とか青とかの鞄は全部廃止するし在庫も全部燃やす。コダック色だけを売り続けろ。
兼ねてから夢中になってしまっていたスニーカー集めには時間も金もかかるが、コダック収集の代償は時間だけである。「うーわこれサイズ無いやん」みたいな小さなショックを受けることも無い。大小を問わずすべてのサイズのコダックが俺の狙撃に対象である。
メインのストーリーは進まない。
コダックが増えるだけである。
俺はゲームの中の世界でさえ、目下の仕事から逃げて自分の出来ることにだけ手を伸ばし小さな小さな充足感に甘んじている。お前の仕事はそんなではない、もっとでっかいポケモンをkillすることだ。
ちゃうちゃう、危ない危ない。ギャラが安いからといって国選弁護をサボってポケモンをしている場合では無い。ましてそのポケモンの中でも仕事をサボっている。危ない危ない。ちゃうねん、本分を忘れるところだった。
弁護人のためにも、まずはイワークを、
ああいやその前にイーブイを、